「労働関係の法律改正」について背景を解説 :Foresight ~専門家が見る世界~ 第3回

前回ご紹介した「労働関係の法律改正」について、その背景を解説します。

人材確保なくして企業の発展はない (1)少子化対策、高齢者対策

労務問題の一番の課題は、今も新型コロナウイルス感染症の影響による、休業や売り上げ減少による雇用の継続・維持のために奮闘されている企業が少なくないということでしょう。今後どうなるか見通しが立たない中で大変な努力が続いています。国の施策も先の見通しがない中での奮闘ですが頑張っていただきたいという思いでいっぱいです。

コロナに次いで、いま一番の課題が少子化、高齢化の影響です。2020年の労働人口は6676万でした。その内訳は下表の通りです。現在の働き盛りは40歳代、50歳代で、全労働者の44%となっています。しかも60歳前半(60-64)が528万人に対し20歳代前半(20-24)は473万人で60歳前半より55万人少なくなっており、少子化の影響が顕著に出てきています。各企業でも“若年者が採用しづらい”と影響が出ているのではないでしょうか。一方、60歳以上が20%を超え5人に一人となっています。60歳定年を過ぎると戦力から外れて「おまけの再雇用」という扱いになっている会社も少なくありません。しかし、高齢者も重要な労働力です。“70歳でも戦力として活躍する社会”に切り替えないといけません。

労働力が確保できないと企業は存続も発展もできません。労働力確保は企業として必須です。国は、少子化と高齢化が進む中で、労働力確保の施策として、高齢者雇用安定法の改正、育児・介護休業法の改正、女性活躍推進法の適用拡大と進めています。「法律が変わったから対応していく」ということでなく、いかに自社が少子化と高齢化に対応する社内のしくみをつくっていくかが、これからの自社の存亡にかかわってきます

例えば、育児・介護休業法で、「出生時育児休業」ができます。これは妻が出産したときに妻の産後休暇中に夫が育児休業を2回取得できるというものです。産婦の産後鬱、周りに子どもがおらず子どもの育て方がわからない、子育てを手伝ってくれる親族がいない、上の子の面倒を見る必要があるなどの事情から、“出産や子育ては夫婦で担う”社会にしていくためのものです。

企業としては、出産は女性の問題という意識ではいけません。社員や社員の妻が妊娠した時から“出産や子育ては夫婦で担う”ことができる仕組みを会社の中で準備することが必要です。“妊娠・出産・育児は会社にとって迷惑”と思っている経営者は根本から意識変革が必要です。

女性社員はじめ男性社員の育児休業の取得率、女性の定着率、女性の管理職の率、社員の有給休暇の取得率などは、若い人が会社を選ぶ時の一つ指標となります。“若者が魅力を感じてきてくれる会社”をいかにつくっていくかは重要な労務問題です。

(アミティエ社会保険労務法人 森村 和枝)