会報誌インタビュー「VOICE・この人この声」では、「会員企業は辞書の1ページ」という同友会らしく会員の等身大の声をお伝えしています。
(一社)eight 代表理事 藤本 貴久 氏

大和郡山市で2013年に障害のある方の福祉事業を創業し、2025年4月からは介護保険事業もスタートしました。現在4つの事業を運営しています。職員は40名です。
経営者の未熟さから始まった経営の学び
創業から1年目、当時5人いた職員のうち4人が退職しました。経営者という仕事が全く分かってないと痛感し、2014年に同友会に入会。2015年に経営指針セミナーを受講しました。一生懸命向き合って作成した指針書を、初めて会社で発表しましたが、「あまりピンとこない」「内容が重たい」と職員からの感想をもらいました。ただ、「経営指針書は毎年作る」「経営指針発表会は毎年やる」と決めたルーティンは継続し、2025年4月で経営指針書作成と経営方針発表会は10年を迎えました。
10年かけて醸成された「当たり前」の文化

はじめは指針発表会を「今年もやるのかやらないのか」を聞いていた職員が、いつしか「いつ指針発表会をやるのか」と日程を尋ねてくれるようになりました。今では経営方針発表会のスケジュールや内容、事前準備を職員が考えて、発表する場をつくることが出来るようになりました。
ブレイクスルーを起こした要因
経営指針書が浸透してきたのは2022年からです。それは幹部になる職員が入社して、社長の代わりに会社の理念を語り始めるようになったからです。社長1人ではなく、現場で共に働く仲間が理念を語ることで、より深く組織に根ざしていく。経営指針書の作成も、経営理念、経営目的、経営基本方針、10年ビジョン、中期計画を共有し、それに基づいて短期計画を6名の役職者が作成・発表しています。
職員のやりたいことの先に10年ビジョンを置く
10年ビジョンである「大和郡山から笑顔をあふれる地域を創る」の実現に向け、従来の障害分野だけでなく、子ども食堂や高齢者支援、さらにはEVトゥクトゥクを用いた高齢者の買物代行など、事業領域を広げています。職員の「やりたいこと」を叶えることが、経営理念の実現につながっていると実感してきています。
誰とやるかが重要
経営者が何もないところからスタートするのと一緒で、社員に経営指針書を浸透していくのにも時間がかかります。eightは10年かかりました。経営指針書が社内に浸透していくためには「幹部」の存在が重要だと感じています。幹部と共に職員のやりがいと働きやすい環境をつくり、10年ビジョンを目指して新たなステージへ向かっていきます。
