【 事業主のハラスメント防止措置 】:Foresight ~専門家が見る世界~ 第10回

【事業主のハラスメント防止措置】

あなたの職場では、女性的言葉を使う男性従業員に対し、隠れて「あの人ちょっとコレ?」と「ホモだ」と嘲笑するようなしぐさをしたり、露骨に嫌な顔をしたりする様なことはありませんか。ゲイやレズビアンは、背徳的行為で異常な嗜好だという偏見を持っている人は少なくありません。

従業員が実際に同性愛者であるかどうかは問題では無く、同性愛という性的指向が侮辱されることが問題なのです。「男らしさ」「女らしさ」の規範から外れていることを侮辱することが結果として、LGBT当事者を傷つけていることがあります。

「性同一性障害者」とは、生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別(以下「他の性別」という。)であるとの持続的な確信を持ち、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者で、生物学的な性と性の自己意識が一致しない疾患であるとされています。(性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律)

性同一性障害の原因は、まだ医学的にはっきりと解明されていません。ただ、近年の研究により、妊娠中に胎児が浴びる性ホルモンの量や種類によって、身体の性別と心の性別にギャップが生じる可能性あるといわれています。

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2019年パワハラ防止法が成立し、すべての企業が人格を否定するような言動(相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を含む)およびアウティングの防止に取り組むことが義務づけられました。

(アウティングは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーなど(LGBT / LGBTQ+)に対して、本人の了解を得ずに他の人に公にしていない性的志向や性同一性等の秘密を暴露する行動のこと)

セクシャルハラスメントについて、事業主(役員)は、自らも、性的言動に対する関心と理解を深め、従業員に対する言動に必要な注意を払うようにしなければなりません。又、従業員は、性的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うことが求められます。(男女雇用均等法)

これには同性に対するものも含まれ、被害者の性的指向又は性自認にかかわらず、性的少数者に関する言動もその対象になります。

会社として、従業員からの相談に応じ、適切に対応するための必要な体制の整備を図りましょう。

(次回は職場づくりの視点で解説します)

(アミティエ社会保険労務士事務所 森村 和枝)