【ビジネスと人権(後編)】:Foresight ~専門家が見る世界~ 第15回

【 ビジネスと人権(中編)】

前編・中編では、社労士の目線から中小企業にとって必要な「ビジネスと人権」の視点、具体的な取り組みのポイントを紹介しました。では実際にどのように進めるか、それは業界や規模、取引先との関係によって企業ごとに異なってきます。各社にとっての第一歩は「自社の立ち位置」と「めざすべきイメージ」を知ることです。

 
中小企業家同友会では、昨年10月に「企業変革支援プログラム ver.2」を刊行しました。ver1にあたる「STEP1」および「STEP2」はもともと、同友会がめざしている企業づくりにおいて「自社の立ち位置」をチェックし、社風や仕組みとして確立・定着するために必要な改善点を明確にするツールです。自社を分析する経営課題カテゴリーは当初5つだったものが、ver2への改定に伴い6つになりました。新たに加わったのが「カテゴリーⅥ 企業の社会的責任」になります。

カテゴリーⅥ 企業の社会的責任
①企業倫理と実践体制の構築
②事業存続への取り組み
③地域と環境への取り組み
④他社や様々な団体・組織との連携

このカテゴリーⅥは、これまで「労使見解」や同友会理念などをベースに全国の会員企業で実践・経験交流が重ねられてきた内容を体系化し、時代の要請に応えるようと新設されました。「ビジネスと人権(中編)」での解説にあったように、これらの経営課題は後回しにされるものではなく、積極的な企業戦略と して認識することが経営者にとっても求められています。

 
書籍中では、テーマごとの解説と自社の成熟度を診断する指標、経営計画の立案に入れるための取り組み例などが示されています。全方向の経営課題に対処しなければいけない経営者にとって、新しいテーマを学び、自社の取り組みに具体化していくことは一人ではなかなか難しいことです。ぜひ、他の会員企業の実践報告を聞いたり、同友会のエッセンスとともに体系化されている「企業変革支援プログラム」を活用したりなど、会にある資源を生かして取り組んでいきましょう。
 

(奈良同友会事務局 山崎 聖子)