【中小企業にとっての「ビジネスと人権」の重要性 ―後編―】
4. どう始めればよいのか
中小企業が「ビジネスと人権」に取り組むにあたり、最初に行うべきことは「自社が関わる可能性のある人権リスクを知ること」です。厚生労働省などが発行するガイドラインやチェックリストを活用して、職場環境や取引先に潜むリスクを可視化しましょう。
以下のステップで取り組みを進めることが推奨されています。
1.人権方針の策定…自社の立場や価値観を踏まえた「人権方針」を明文化し、従業員や取引先に周知する。
2.人権リスクの特定と評価…従業員や顧客、取引先などに配慮し、どのようなリスクが存在するかを明らかにする。
3.防止・軽減策の実施…ハラスメント対策や就業規則の整備、社内研修の実施など、現実的な対応策を講じる。
4.継続的な見直しと改善…一度決めた取り組みも、定期的に見直し、社会の動向に応じて柔軟に対応していく。
5. 「ビジネスと人権」は競争力の源泉へ
「ビジネスと人権」は、単なる法令遵守や社会的責任の話ではありません。それは、これからの時代に求められる「持続可能な経営」の根幹であり、中小企業が生き残り、成長していくための鍵でもあります。
人権に配慮した経営は、従業員の働きやすさを向上させ、取引先や地域社会との信頼関係を築き、顧客や投資家からの評価を高めます。その積み重ねが、最終的には企業の価値を高め、事業の発展につながっていくのです。
おわりに
中小企業の事業主である私たちにとって、「ビジネスと人権」への取り組みは、今や無視できない課題です。とはいえ、すべてを完璧に実行する必要はありません。まずは関心を持ち、自社でできる小さなことから一歩を踏み出すことが重要です。
従業員が安心して働ける環境づくり、地域との良好な関係の構築、取引先との信頼関係の強化。これら一つひとつの積み重ねが、企業の未来を形づくっていきます。
おわり