【強い企業と同友会理念】:Foresight ~専門家が見る世界~ 第22回

【 給与体系について 】
給与体系は、企業の経営戦略や社員のモチベーションに大きな影響を与える重要な要素です。特に中小企業では、適切な給与制度の選択が企業の持続的成長と社員の満足度向上に直結します。今回は、様々な給与の種類について、概要を解説します。
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1.生活給
生活給は、社員の生活を支えるために支給される給与であり、通常は年齢や勤続年数に応じて決定されます。メリットとしては、安定した収入を提供し、社員の生活基盤を安定させる点が挙げられます。しかし、一律の給与が支給されると、業績や能力に関係なく同じ給与となるため、モチベーションや生産性の向上には繋がりにくいというデメリットがあります。

2.職務給
職務給は、社員の職務内容や責任の重さに応じて支給される給与です。業務の難易度や貢献度に基づいて決定され、公正な報酬を提供できます。これにより、社員のモチベーション向上や優秀な人材の確保が期待できます。しかし、職務評価の基準を明確に設定し、公正に運用する必要があるため、評価システムの構築には注意が必要です。

3.職能給
職能給は、社員の能力やスキルに応じて支給される給与です。技術や知識、経験を評価し、それに基づいて給与を決定します。能力向上を促進し、公正な評価が行えるというメリットがありますが、能力評価の基準を明確に設定し、公正に運用することが難しい場合があります。また、短期的な成果が反映されにくいというデメリットもあります。

4.成果給
成果給は、社員の業績や成果に応じて支給される給与です。具体的な成果に基づいて決定されるため、業績向上やモチベーションの向上が期待できます。
しかし、成果を上げた社員とそうでない社員の間で給与格差が大きくなる可能性があり、短期的な成果に重点が置かれるため、長期的な視点での業務遂行が疎かになることもあります。

5.資格給
資格給は、特定の資格や認定を取得した社員に対して支給される給与です。専門知識や技能を持つ社員を評価する制度であり、資格取得を促進し、公正な評価が行えるというメリットがあります。しかし、資格が業務に直結しない場合は効果が限定されることや、資格取得後のモチベーション維持が難しいというデメリットがあります。

6.役割給
役割給は、社員が担う役割やポジションに応じて支給される給与です。責任や役割に応じた適切な報酬が提供されるため、社員の責任感やモチベーションを高めることができますが、役割の固定化や評価の偏りが生じやすい点には注意が必要です。

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〇〇給という呼称は様々であり、また、同じ名称であっても実態はバラエティに富んでいます。
中小企業の経営者としては、どの給与制度が自社に適しているかを慎重に検討することが重要です。例えば、生活給を基盤としつつ、職務給や成果給を併用するハイブリッド型の給与制度を導入することで、安定性と公正性を両立させることが可能です。それぞれの特性を理解し、自社の状況や目標に合わせて最適な制度を構築することが求められます。また、社員の意見を取り入れながら給与制度を構築し、透明性を確保することも大切です。

執筆者:町田社会保険労務士事務所 町田 泰昭