Foresight ~専門家が見る世界~ 第24回

政府方針では、2030 年代半ばまでに全国加重平均で最低賃金を時給1,500 円まで引き上げるとしています。つまりこれからの10 年間は最低賃金が毎年約50 円ずつ上がるという計算になります。

⑴人件費の増加 当然直撃するのは、人件費です。 パートなどの給与だけではなく、正社員の給与も増加します。派遣社員の単価もアップします。正社員やフルタイムのパートの給与が上がるに伴い、社会保険料の負担も増加します。

⑵パート・アルバイトの時間減少 時給が上がるということは、扶養範囲内で働こうとしている方は、時給が上がるにつれて働く時間を短くされることになります。 その分を誰かがカバーしないといけなくなり、残業代が増えたり、余分に1 名採用したりすることになります。

⑶価格転嫁の必要性 人件費の増加に伴い、企業は商品やサービスの価格を上げざるを得ない場合があります。しかし、消費者や取引先がその価格上昇に応じてくれなければ、競争力が低下する可能性もあり、売上に影響を与えることがあります。

⑷効率化のための設備投資 人件費が高騰することで、企業としては自動化やデジタルツールへの投資を進める必要が生じます。長期的にはコスト削減や業務効率向上が図られるものの、初期投資が中小企業にとっては負担となる可能性があります。

(5)まとめ 中小企業にとっては、人件費の増加は厳しい経営環境ではありますが、付加価値の高い仕事へシフトし、業務効率化を図るチャンスと捉えることもできます。 この変革を成し遂げることができた企業は、間違いなく生き残ることができる企業となります。

執筆者:かなえ経営株式会社 佐野 元洋