【インボイス制度、始まってからのQ&A】:Foresight ~専門家が見る世界~ 第19回

【 インボイス制度、始まってからのQ&A 】

インボイス制度が開始され、2ヶ月が経過しました。
現場では、色々な問題が起こってきています。今回はよくある質問事例をご紹介したいと思います。

 

1.少額な返還インボイスの交付義務は?
最近多く聞かれるのが、「仕入先から返還インボイスの発行義務があり、事務負担が増大するので振込手数料を御社でご負担ください」と言われるというものです。
インボイス発行事業者が国内で行った売上につき、返品や値引きなどの売上げに係る対価の返還等を行った場合には返還インボイスの交付義務がありますが、その金額が税込1万円未満である場合には、返還インボイスの交付義務が免除されるという規定になっています。

つまり、売手が負担する振込手数料相当額を売上値引きとして処理している場合には、通常、振込手数料相当額は1万円未満となりますので、当該売上値引きに係る返還インボイスの交付義務が免除されるので、上記の言い分は正しくないということになります。

 

2.クレジットカードでの購入は、クレジットカード利用明細書の保存でよいですか?
クレジットカード利用明細書は、一般的にインボイス記載事項を満たす書類には該当しないため、その保存のみで仕入税額控除はできません。
①購入時の領収書・・・消費税法上の「請求書等」(簡易インボイス)に該当し、これを保存することで、仕入税額控除できます。
②クレジットカード明細・・・従前より、クレジットカード利用明細書の保存では、仕入税額控除できません。
ただし、例えば、少額特例の対象となる取引や、公共交通機関特例、出張旅費等特例など、インボイス保存不要で仕入税額控除が可能となる特例の対象となる取引については、クレジットカード利用明細書に基づいて仕入税額控除に係る処理を行ったとしても問題ありません。

 

3.手書きなど要件を満たさない領収書をもらった場合

手書きに限らず、大手チェーン店以外の飲食店の領収書の場合、要件を満たさない領収書が非常に多く見受けられます。
とりあえず、インボイス番号を記載しておけばいい…そんな感じですね。小売店、飲食店、タクシー業者などには、適格簡易請求書が認められていますが、それでも下記の要件は必須の記載事項となります。
1. 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
2. 取引年月日
3. 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
4. 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜きまたは税込み)
5. 税率ごとに区分した消費税額等または適用税率
インボイスの要件を満たしていない領収書をもらった場合には、「正しい領収書の再発行をしてもらってください」ということです。しかし、遠くで飲食したお店にわざわざ領収書の再発行で行くのも面倒ですよね。ですから、領収書をもらったその場でインボイスの要件を満たしているか確認し、不足があればきちんと記載してもらうようにしましょう。

 

■まとめ
色々と面倒な処理が発生しますが、後々にトラブルの火種を残さないためにも、きちんとした対応をしておきましょう。

執筆者:かなえ経営株式会社 佐野 元洋