【“SOGI”と法務】:Foresight ~専門家が見る世界~ 第12回

【“SOGI”と法務】

近時よく用いられるSOGIとは、Sexual Orientation,Gender Identityの略で、
「性的指向(Sexual Orientation)」、
「性自認(Gender Identity)」を合わせた略語です。

性的指向とは、「恋愛又は性愛がいずれの性別を対象とするか」をいいます。

人によって、性的指向のあり方は様々であり、例えば自身と異なる性別の人を好きになる人、自分と同じ性別の人を好きになる人や、誰にも恋愛感情や性的な感情をもたない人もいます。

また、性自認とは、「自己の性別についての認識」のことをいいます。生

物学的・身体的な性、出生時の戸籍上の性と、性自認が一致しない人をトランスジェンダーといいます。生物学的な性が男性で性自認が女性、生物学的な性が女性で性自認が男性といった場合があり、また身体的な性に違和感を持つ人もいます。

SOGIを理由とする差別を直接禁止する法律は、現在のところ制定されていません。
しかし、裁判所は憲法14条の法の下の平等や、同法13条の人格的利益を民法上の一般条項(権利濫用、信義則、公序良俗、不法行為等)の解釈判断のなかで考慮し、SOGIを理由とする差別を民事上違法とする裁判例を蓄積させています。

一例を挙げると、あるゴルフクラブがトランスジェンダーの方の入会申請を、嫌悪感や不安感からクラブ会員間の親睦を失いたくないとの理由により入会を承認しなかった事案において、裁判所は「人格の根幹部分に関わる精神的苦痛を受けたことも否定できない」として人格的利益の侵害を認め入会拒否を違法と判断しました。

事業活動においては従業員や顧客との接触が必ず生じますが、その際にはSOGIを理由とする差別を行うことの無いよう、注意する必要があります。

執筆者:学園前総合法律事務所 馬場 智巌