勝ち残る「変身経営」・後編 :Foresight ~専門家が見る世界~ 第5回

【 勝ち残る「変身経営」 ・ 後編 】

 

前回、業態転換について①オクトパス型、②ピボット型をご紹介しました(DOYUなら 348号掲載)。今回は別の2タイプをご紹介します。

 

③ クロス型

異なる事業を掛け合わせ(=クロスオーバー)、相乗効果を引き出す方法です。

この型は「味の素」が当てはまります。面白い噂で「ゲーム機やパソコンの品薄は味の素が原因か」とSNSで広まりました。実は味の素は、パソコンの半導体を載せる電子基板用の絶縁材料「味の素ビルドアップフィルム」で世界シェアのほぼ100%を握っています。うま味調味料の味の素の生産を通じて同社が得意とする「アミノ酸」を製造、解析する技術を用いて、本来なら混ざり合わない物質を味の素ビルドアップフィルムという素材への加工に成功しました。ただ、この素材は常温では3日で劣化するという特徴をもっていましたが、「常温がダメなら冷凍してしまえばいい」として食品メーカーならではの発想で素材を冷凍し、半導体材料を完成させました。まさに異なる技術の掛け算で生まれた転換です。

④ ヤドカリ型

事業の本質は変えず、時代背景や成長ステージに応じて新たな技術やツール(=新しい貝殻)を取り入れる方法です。古くなった殻を脱ぎ捨てて、新たな器に引っ越すヤドカリのように転換していきます。

この型は「リクルートホールディングス」が当てはまります。創業当時大学生向けの就職情報誌を発行し求人ビジネスで成長しましたが、その後中古車情報誌「カーセンサー」、旅行関連情報誌「じゃらん」、結婚関連情報誌「ゼクシィ」など事業領域を広げています。また、「Airレジ」の誕生でメディアの会社から脱皮し、SaaS(Software as a Service)へ移行しています。

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 業態転換にも様々な型がありますが、どのような転換ができるか、自社の強みや特徴を改めて見直し、自社に合った転換(変化)の参考にしていただきたいと思います。

(巳波会計事務所 巳波 弘一)