会報誌インタビュー「VOICE・この人この声」では、「会員企業は辞書の1ページ」という同友会らしく会員の等身大の声をお伝えしています。
(株)ショーワ薬局 代表取締役 吉川 晃之祐 氏

この2月、父から承継し株式会社ショーワ薬局の代表取締役に就任いたしました。父は昔から一度も承継の話をしたことはなく、私の自主的な判断を待ってくれていました。私がショーワ薬局に入社するきっかけとなったのは、約10年前。「自分薬局」ブランドを立ち上げはじめる時期でした。30歳を目前に今後の人生を考えている時期で、奈良で次の世代の薬局経営者の動きが活発になってきたこともあり、父と新しいブランドについて話をしている中、会社に入社することを決意しました。
経営指針書への取り組み:「自分薬局」の哲学
当社の経営指針(社是)は、「自分薬局」へのブランド転換と共に進化しました。父の時代から大切にしている価値観を経営理念として残しながら、2016年の全店舗「自分薬局」改名時には、新たに社是を策定。戦後の「物やお金」に価値があった時代から、生活水準が上がったことで「自分らしく生きる」ことを幸せの基準とする現代にあったものに変化させました。薬局の役割も「薬の提供」から「患者様が自分らしくいられる価値提供」へと明確に転換しました。社是は全スタッフに共有され、「接遇」という、言葉にならない患者様の気持ちを汲み取る独自のサービス概念を導入しました。この変革は当初、スタッフの混乱や離職を招きましたが、新たな方針に共感し成長した社員たちが管理者となり、組織はより強固になりました。

経営指針発表会の実践と成果

当社は年に2回、全社員が参加する全体研修を15年以上前から行なっています。以前は保険改定対応と報奨が主な目的でしたが、「自分薬局」ブランド確立後は、一度伝えただけでは浸透しないブランドの哲学や方向性を様々な切り口で繰り返し伝える場としても重要な場となっています。代表就任後初めての全体研修では、私が「自分薬局がどういう薬局であるか」を新代表の言葉として直接伝えました。その時幹部社員のみんながお金を出し合って、魚好きの私にとても大きな鯛をサプライズしてくれ、とても感激しました。優勝力士のアレです!
未来への展望:事業承継と「自分経営」
父の時代は、業界全体が成長期にあったため、「いかに利益を出すか、いかに拡大するか」という「拡大志向」の経営が中心でした。しかし、業界が成熟期を終え、次のビジネスモデルが求められる現代においては、「地に足つけた経営」が不可欠であると認識しています。そして私が承継する際は、出口を意識した経営計画を立てています。 現在最も注力するテーマは、自分らしく生きる「自分経営」の全社実践です。この「自分経営」を実践することで、社員は「先々を見据え、自分にとって何が必要かを計画する力」を養うことができ、それが仕事への主体性や、会社の根幹である「自分らしく生きる」ことへの深い理解と実践に繋がると確信しています。社員が未来を「自分ごと」として考え、主体的に行動することが、持続可能な組織成長の鍵となると考えています。
