会報誌インタビュー「VOICE・この人この声」では、「会員企業は辞書の1ページ」という同友会らしく会員の等身大の声をお伝えしています。
(株)ヒロホールディングス 代表取締役 向山 孝弘 氏 (やまと南西支部副支部長)

大学を卒業して 3 年間のホテルマンを経て、1990 年に創業。ホテルが取引先の商社事業からスタートしました。現在はデジタルアーカイブ/プロジェクションマッピング/AI(人工知能)/映像・XR 技術などを駆使する、オリジナルのトータルクリエイティブブランド Zeta【ゼータ】事業をはじめ、奈良エリア No.1 シェアを誇るソフトバンクショップ6 店舗展開するモバイルキャリアショップ事業、革ブランド Rebonally【リボナリー】事業など計 5 事業を展開しています。
同友会との出会いと経営改善
2002 年 10 月経営の苦境に立たされた中で、コンサルティングを受けていた先生から「こんな会がある」と同友会を紹介され、入会を決めました。入会前は赤字が続いていましたが、同友会で学びを深めるにつれ、業績は黒字へと転じ、社員の成長も実感するようになりました。
入会当初は「売れそうな人」を採用することを重視しており、企業理念もない状態でした。経営を学んできませんでしたので、支部例会での報告は毎回が新鮮で、企業理念、経営理念、行動指針を例会で知って、早速策定し、「どういう思いを持ち、どんな人と働きたいか」という視点を持つようになりました。理念に共感する人材の採用を始めたことで、収益も安定し始めました。お客様にグイグイ販売することから、お客様に喜んでいただける販売をすることに会社の考え方を大きく変えました。しかし、既存社員には理念がなかなか響かず、新たに採用した社員だけが理念に共感して成長する状況が生まれ、組織の変革が徐々に進んでいきました。
大きな挑戦と苦い経験

経営の成長とともに新たな挑戦にも踏み出しましたが、大きな失敗も経験しました。東京に別事業で新規店舗を出店しましたが、結果的に何億円もの赤字を出すことになりました。原因は、「取引先に対してノーと言えなかったこと」、そして本業とのシナジーがなかったことでした。その後、経営方針を見直し、「取引先にもダメなことはダメ」とはっきり伝えるよう舵を切りました。
社員にも経営計画の策定に関わってもらい、経営方針発表会ではできるだけ多くの社員が舞台に立つ形式を導入。開催場所は、ヴェルデ辻甚、やまと郡山城ホール、奈良春日野国際フォーラム、奈良県コンベンションセンターと社員数とともに大きくなっていきました。
「人を育てることが企業を育てる」-同友会の学び
入会前は「企業と人は別のもの」と考えていましたが、同友会の学びを通じて「人を育てることが企業を育てる」ことを実感するようになりました。奈良県で事業展開し、同友会で地域との関係性を深める中で、地方創生の視点も養われていきました。地域を見ることで新たなビジネスの可能性を見出し、官公庁とのつながりも生まれ、デジタルアーカイブなどの Zeta の新規事業へと発展しました。
地域に育ててもらった企業として、「地域のためになることは何か?」を考え続けた結果、雇用を創出し、奈良に住む人を増やすこと、そして奈良の貴重な文化財を未来へつないでいくことなどが長期的な目標となりました。
上場という選択-100年続く企業を目指して
「100 年先も続く企業を作る」という大きな目標のもと、上場を決意しました。その背景には、後継者問題と経営者保証の課題がありました。会社を存続させるには ①M&A か ②社員承継 という選択肢しかない状態。社員継承だと経営者保証が課題となり継承に相当時間がかかる。そんな中第 3 の選択肢「上場」を見出しました。会社はいい時ばかりではなく、9 割 9 分は苦しい時期。しかし、それでもついてきてくれた社員のためにも、上場は必要と判断しました。また、上場することでコンプライアンスやガバナンスを整え、社員が誇りを持てる企業へと進化するという狙いもありました。
上場の鐘を鳴らす瞬間には、涙する社員もいました。社員だけでなく、「社員の家族も喜んでくれた」あの感動は今でも忘れません。さらに企業の成長を加速させるため、本則市場への上場を果たし全社員と鐘を鳴らすことを目指しています。上場の効果は事業にも波及し、大手企業との取引拡大やキャッシュフローの改善が進みました。年間経費はかかるが、前金不要の取引が増え、経営の安定性が大きく向上しています。
未来への展望
同友会で学んだ「人を育てることが企業を育てる」という理念を軸に、これからも地域とのつながりを大切にしながら、100 年続く企業を目指していきたい。地域に根ざし、全国へと展開する企業として、さらに成長を続けていきます。