会報誌インタビュー「VOICE・この人この声」では、「会員企業は辞書の1ページ」という同友会らしく会員の等身大の声をお伝えしています。
かなえ経営(株) 代表取締役 佐野 元洋 氏 (副代表理事)

事業内容は、税理士法人を母体とした経営サポート業務(経営計画作成、PDCA支援、経営会議・営業会議支援)、M&Aアドバイザー業務です。従業員数は現在11名で、うち1名は山形県でフルリモート勤務をしています。
社員の一言が灯した、指針書作成への道
佐野元洋氏が初めて経営指針書を作成したのは、2011年12月、奈良同友会主催の経営指針セミナーでのことでした。セミナーを受ける前から数字計画や経営理念はあり、経営はうまくいっていると感じていたましたが、経営指針セミナーに参加するきっかけとなったのは、創業から5~6年勤めた社員から「会社の未来が見えない」と退職を申し出られたことでした。「社員に会社の進むべき道を示せていなかった」と痛感し、経営を根本から学び直すことを決意しました。

社内外を巻き込み、指針書を血肉に
初めて作成した指針書を社内で発表した際、社員の反応は今ひとつでした。しかし諦めず、少しずつ社員を巻き込みながら、共に指針書を磨き上げていきました。作成から3年目には、同友会会員や税理士、社会保険労務士、司法書士など周辺士業を招いた発表会をスタートしました。コロナ禍で一時中断したものの、2025年2月には5年ぶりに再開。発表会には、アライアンス先の士業や保険会社など外部から計6名が参加しました。社員からは「外部の方の意見を聞けて良かった」「刺激になった」といった声が聞かれ、継続への手応えを感じています。 佐野氏は、外部の方を招く理由について、「自分たちだけで議論していても、責任感が薄れてしまう。外部の方に見ていただくことで、自分たちの言葉に重みが増し、必ずやり遂げようという強い決意が生まれる」と語ります。
【着実な変化】PDCAサイクルを深化させ、社員の意識を変革
初期の頃は発表会が終わると達成感だけで終わってしまい、PDCAサイクルを十分に回せていませんでしたが、現在の体制になってからは、行動計画を月々のチェック項目に落とし込み、進捗状況を管理できるようになりました。月1回の会議では、社員全員が自然と指針書を持参し、その内容に沿って議論することが習慣となっています。細かい方針や社内規定も指針書に明記することで、社員への理解と浸透を図っています。以前は、毎月の会議で大まかな目標を話し合う程度でしたが、ここ5年はPDCAサイクルを重視し、毎月の会議で進捗状況を確認しています。その結果、「毎月の会議で次の3ヶ月のアクションプランを作成し、達成感を得られるようになった」と佐野氏は語っています。佐野氏は指針書を「会社の説明書プラス会社の行く先を示す羅針盤の意味合い」を持つものと捉えています。
【未来への展望】小さい一歩を踏み出しやり続ける

社員の変化について、佐野氏は「顧問先に対して熱心に経営計画の必要性を説く社員の姿を見て、自分の言葉で経営計画の重要性を語るのを見て、本当に嬉しかった」と語ります。今後の指針書の取り組みについては、「次の10年で後継者を育成し、指針書作成を彼らに引き継ぎたい。最終的には、私が書くのは冒頭の言葉だけという形を目指したい」と、次世代への継承を見据えています。 最後に、これから指針書作りに取り組む経営者に向けて、「1回や2回でうまくいくものではない。10年、15年と続けることで、少しずつ成果が見えてくる。まずは始めて、継続することが大切」と強調し、「準備ができてから、ではなく、今すぐ始めるべきだ。小さくても良いからまず始めて、継続してほしい」と力強く語りました。