㈱益久染織研究所 吉井 委代氏~SDGsな会員企業紹介 File No.17

(株)益久染織研究所   代表取締役   吉井 委代 氏

所在地   :奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺南3-5-47

事業内容 :自然栽培綿100%の糸、布、衣類・寝具等の企画・製造・販売

1995年阪神大震災罹災を契機に兵庫県から奈良県の現事業所(斑鳩町)に移転。以来、奈良市内で「自然の布館」の店舗展開をされるなど、手紡ぎ糸や綿の良さを伝え続けて来られました。

現社長の父であり、創業者の廣田益久氏が兵庫県西脇市で糸商としてスタートしたのは1957年のこと。取引先の倒産など数々の困難に遭いながらも1965年には会社を興され、高度経済成長期には大手商社との取引など糸素材の販売を精力的に展開されました。そんな中、友人の会社の負債を請け負い、自社を整理したことや、出張先での天然染料との出会いなどから次第に大量生産、大量消費のあり方に疑問を持つようになり、1975年には手織りや手紡ぎなどの工芸手法を教える教室である工房「手織りひろた」を開講されました。これが「益久染織研究所」のもとになります。1980年代に入ると中国山東省で手織りなどの技術指導に行かれ、それが縁で1990年代に合弁で現地に自社工場を建てられました。無農薬で綿を栽培する現地の農家と契約し、手紡ぎ、染め、織りと糸や布の製造を1社で完結させています。

<SDGsのゴールで見ると>

12.つくる責任、使う責任

「未来へ。おかえし。」この言葉が益久染織研究所の根幹であり、経営姿勢そのものです。循環するものかどうか。種を蒔き、やがて実となったもので作られ、大事に使われた後、最終的には土に還れるものかどうかを問う。また手紡ぎ、草木染めなど古くからある良いものを次世代のためにも残していきたい。そんな思いを伝えるために天然素材を使い、人の手でゆっくりと手間ひまかけた製品づくりが行われています。

14.海の豊かさを守ろう

ガラ紡機という明治時代に日本人が発明した紡績機で、一般的な紡績機の100分の1のスピードでゆっくりと紡いで作られた和紡布。その作り方ゆえにできる細かな毛羽や凸凹のため、洗剤なしで食器の汚れなどが落とせます。水に溶解しないものが含まれる合成洗剤を使わないので、和紡布を使うと海を汚すことを減らすことができます。

3.すべての人に健康と福祉を

和紡布はまた、化学薬品を使う後加工をしないので、肌にやさしく、赤ちゃんや皮膚に敏感な人が使うことができ、アトピー性皮膚炎が軽減されたとの声があるといいます。また、化学物質が分解されずに血液の中に入り込む経皮毒を回避できます。

また、化学薬品を使う後処理をしないめ、綿が本来持っている種子を守るためにUVカットをする性質を利用でき、UVカット率が99%と紫外線対策に威力を発揮する布です。そのようなUVカット機能や天然素材の空気清浄機能により、例えばカーテンとして使われる場合には、質の良い眠りへとつながるなど衣・住分野で健康づくりに関わるものとして80年代から今に至るまで健康志向、自然志向の人に親しまれています。

執筆者:ア・マ・テ・ラ・ス 寺前美加